あかんべえ
新潮文庫から出ている、宮部みゆきの作品は全て読破。
人情だけでは終らない、ファンタジーや超能力、オカルトチックな要素もふんだんの、宮部時代物作品が大好きです。
霊感のある料理屋の娘と、店に居つく「オバケさん」を巻き込んだお話。
人の欲と邪な心が業となり、魂が怨念と化して鬼になった亡者は心底恐ろしいけど、一番怖いのは生きている人間。。。
意地の張り合いから妬み嫉み、兄弟の確執、横恋慕。それにお金が絡んだら、世の中は生きている亡者だらけ。
この世とあの世の亡者達を、料理屋の娘おりんちゃんが、心優しい「おばけさん」たちと協力して浄化していきます。
最後は「オバケさん」達の西方浄土への旅立ちで、クライマックス。
ドロドロとした大人の世界に躊躇しつつ、自身の出生の秘密にも心に影を落とすことのない、澄んだ瞳を持つ少女少年を描くのが、宮部みゆきは本当に上手です。
途中、自分の胸に手を当てて己を考えてしまう場所もあり、読むのが怖くなる部分もあったけど。。。
最後はいつもの日常が戻って、前向きな明日が始まる予感で終ります。宮部みゆきの作品だから、ハッピーエンドで終わるだろうという予測の元に読んでいるので、深夜の読書も安心なのですが。
幽霊の見える人と見えない人。このお話の中でその違いは、「オバケさん」と同じ心のオリを持っているかどうか。。。
・・・ぞっとします。
兄弟の確執がある人は、それが原因で亡くなった亡者を目にし、邪な恋愛が絡めば、その亡霊を。親の顔を知らない子供は、孤児の亡霊を。
艶やかで、いつも良い匂いのする髪を櫛巻きにしている、三味線を抱えた女幽霊。生前はさぞかし小股の切れ上がった良い女だったことでしょう。
「おみつ」さんだけは見えないといいな。。。
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