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2009年5月17日 (日)

輪違屋 糸里

”壬生義士伝”が男の側から見た幕末と新撰組の話なら、”輪違屋 糸里”は、京都の女から見た新撰組のお話。

壬生義士伝”は、私と同じ奥州(東北)出身の盛岡藩下級武士が新撰組の仲間となり、故郷に置いた家族を偲び、武士としての”義”を家族有らばこそ(職業としての)として、死んでいった切ない話でした。

でも、泣くほどではなかった。

しかし、”輪違屋 糸里”には泣かせられました。。。浅田次郎の、読者の涙腺を刺激する文筆はやはり素晴らしい!!

京都は島原の置屋”輪違屋”の傾城糸里の美しさと賢さと情の深さ、女としての誇りが物語の核です。

新撰組を題材にした話では、悪者と扱われる 芹沢 鴨。浅田次郎は、極悪非道な乱暴者としてだけの描写ではなく、本物の武士の姿を芹沢 鴨に写していました。

愛する糸里をも保身の為に利用し、最後は切り捨てようとした土方歳三。糸里に己の一番痛い所を論破されて、手も足も出なかった最後の描写は胸がすくおもいでした。

新撰組をはじめ幕末の混乱期の多くが小説となっていますが、よっぽど歴史が好きでないと、登場人物が多すぎて好みが別れるところです。大河ドラマで高視聴率を獲得したこともあり、だいぶ身近にはなってきたようですが。

土方歳三の策にはまり暗殺された芹沢 鴨。愛人お梅だけは彼の孤独や寂寞感を共有できました。

同じく暗殺される平山五郎を愛する桔梗屋の吉栄の切なさと女心。。。

我慢と苦労を背負う女に生まれて、損をすることの方が多かった時代において、女は刃ではなく女の道理で世間の荒波と戦ってきたのでした。

芹沢 鴨暗殺という新撰組内の大事件と、島原の芸妓糸里が太夫上がりをする両クライマックスは、一寸先は闇の不安定な幕末において、どちらもが真実です。

                                                        

この本を読んで、目から鱗の違いを知りました。

江戸の吉原と、京都の島原。どちらも東と西を代表する歓楽街ではありましたが、吉原芸妓の最高呼称は花魁で、島原は太夫。映画の”吉原炎上””陽暉楼”などがイメージにあり、花街と呼ばれる場所は、全て春をひさぐ場所と思っていたのです。

しかし、島原の芸妓最高位の太夫は、畏れ多くも朝廷から五位の位を賜り、禁裏にも呼ばれるほどの身分なのです。背景に御所や位の高い地位のお屋敷もあり、やんごとなきお人からの逢状の付け届けのある、庶民からは遠く手の届かない存在。

そう、芸は売っても色は売らないという違い!目から鱗!

吉原が高級風俗店とすれば、島原は高級クラブ。。。?

                                                       

新撰組が逗留した壬生の八木家は、保存されて見学することができます。題名となった”輪違屋”も島原に現存しており、現在一階はバーとして営業しているそうです。

京都の魔界ツアーも楽しかったけど、島原から見た新撰組の足跡を辿る旅も面白そうです。なかなか同志を募るのが難しそうですが。。。

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